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大阪高等裁判所 昭和54年(ラ)711号 決定

事件

抗告人

破産者三益株式会社破産管財人

山本寅之助

相手方

蝶理株式会社

右代表者

小林祐三

右代理人

北川邦男

外二名

第三債務者

沢田周毛莫株式会社

外四名

(大阪高裁昭五四(ラ)第七一一号、昭55.3.17民事第二部決定、抗告棄却)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、「原裁判を取消す。相手方の本件申請を却下する。手続費用は相手方の負担とする。」との裁判を求めるというにあり、その理由は、「相手方の本件債権差押及び転付命令の申請は破産者三益株式会社に対する動産売買の先取特権に基づく物上代位によるものであるところ、相手方は右破産会社が破産宣告を受ける以前に破産会社の第三債務者らに対する債権につき先取特権の物上代位による差押をしていないから、右申請は失当であり、これを認容した原決定は違法である。」というにある。

よつて按ずるに、記録によれば、相手方は昭和五四年九月二七日から同年一一月二六日までの間に破産者三益株式会社(「破産会社」という。)に対する原決定請求債権目録記載のとおりナイロン加工糸、アクリル糸等を売渡し、合計金二一六〇万一六一五円の売掛金債権を取得したこと、破産会社はその頃第三債務者らに対しそれぞれ原決定差押債権目録記載のとおり右買受にかかる商品を転売したこと、そこで、相手方は破産会社に対する前記売掛金債権を被保全権利として破産会社の第三債務者らに対する右商品売買による売掛金債権について仮差押の申請をし(同裁判所昭和五四年(ヨ)第五〇七〇号)、昭和五四年一一月三〇日同裁判所よりその旨の仮差押決定を得てその頃これを執行したこと、その後破産会社に対し昭和五四年一二月一〇日午前一〇時破産宣告がされ、相手方の破産会社に対する前記売掛金債権につき弁済期が到来したので、相手方は昭和五四年一二月二七日右売掛金債権を請求債権とし、前記仮差押にかかる債権中請求債権に相当する部分を差押債権として債権差押及び転付命令を申請し、原決定はこれを認容したものであることを認めることができる。

ところで、動産売買の先取特権に基づき右動産の転売代金債権に対し物上代位権を行使するためには、その払渡前に自ら差押をすることによつて債権を特定させるとともに第三者に対し優先権を公示しなければならないものと解すべきところ、仮差押も保全の目的という制限を除いては差押とその性質、機能において全く同様であるから、右の場合にこれを差押と同視して差支えない。

したがつて、右認定事実によれば、相手方は抗告人に対し前記破産会社の第三債務者らに対する債権につき動産売買の先取特権の物上代位による優先権を主張しうるものと解すべきであり、抗告人の主張は採用することができない。

よつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(川添萬夫 吉田秀文 中川敏男)

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